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視聴したアニメの感想書いてます。

『忘却の旋律』第5部 迷宮島編(第12~14話)メモ

第12話 迷宮島

第5部:榎戸「前回まででレギュラーキャラクターが出揃ったので、この辺りでシリーズを振り返る的な意味を込めて、ちょっと風変わりな展開にしようと思ったんです。今回は1、2話に出てきたキャラクターが、色んな意味を持って再登場するシリーズですね。第1部と第5部と最終話だけ見ても話が通じます(笑)」

f:id:chapida:20190718192648p:plain 迷宮島編に出てくるモンスター及びモンスター・ユニオンが、ホル(牛)とグローバルやまねこ(虎)であることから、船の名前が「うしとら丸」なのだろう。また、この回に出てくる小夜子の「虎穴に入らずんば」という台詞も、グローバルやまねこにも引っかけているのだろう。

f:id:chapida:20190718192826p:plain 太古に沈んだはずの火山島。島の周囲が赤いのは、モンスターの影響下にあることを示す。モンスターがこの世界に現れた影響なのか、この島は隆起と沈降を繰り返し、太平洋のあちこちに出現しているという。地下には迷宮が広がる。榎戸「白夜岬編の赤灯台、鼠講谷編の壁画のような、インパクトのある映像を用意したいと思ったんです。月は一年間に数センチずつ遠ざかっていて、何万年も昔は地球に近くて、今の十何倍大きかった時とかあるんですよ。迷宮島は、時空の混乱した迷宮というふうにしようと思ってたので、月が大きく見えるというのは、それくらい時空が混乱した"嘘の世界ですよ"ってことを、最初に見せるにはいいかなと」

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 ギリシャ神話におけるミノタウロス誕生の物語を描いた壁画。張りぼての雌牛に入り、雄牛と交わった王妃パシパエの物語である。神話によると、迷宮には定期的に若い男女が生贄として捧げられた。

トラ型のロボット怪獣:グローバルやまねこ専用のロボット怪獣。旧型だが敏捷性に富み、壁面を疾走。旋律を乱すノイズを発生させ、動力に干渉し機能を停止させるアイバーマシン封じの兵器・"グローバル・ノイズキャノン"を装備する。(エラン・ヴィタールは特殊なアイバーマシンのため、直撃を受けても行動可能)

小夜子「あたし、どうすればいいの…」

 榎戸「小夜子は、黒船さんを追いかけざるを得ないんだけど、黒船さんとどうこうなれるとは、もう思ってないのかなという感じですよね。リアリティのあるところだと、やっぱりボッカだろうと(笑)」

ソロ(モンスターキング・ソロモン・Ⅲ世):モンスターの生贄に選ばれた少年。その正体は、かつてのメロスの戦士で現在のモンスターキング。今も腕に聖痕を持つのは、彼がメロスの戦士であった証である。名前は「独奏者(ソロ)」から。榎戸「ボッカが見込みのありそうなメロスの戦士なので、どんな奴か直接見に来たんですね」

第13話 黒船

ソロ「僕の歌を歌わない 教えた歌を歌わない 小鳥は歌う 小鳥の歌を そしてみんなは 聞き惚れた」

 『ソロの歌(『忘却の旋律』挿入歌)』。榎戸「小鳥とは、メロスの戦士のことです」(→モンスターの教えに従わないメロスの戦士は、数万から数十万に一人現れるという。そして一人のメロスの戦士には、モンスターを全滅させ得る力があるとされている。そのような「みんなに聞き惚れられる(カリスマ的な)メロスの戦士」の出現を、モンスターたちは怯えているに違いない。だからそれまでの露骨な攻撃を止め、今は効率的な支配に努めているのだろう)

f:id:chapida:20190718193934p:plain 黒船に助けられる小夜子:榎戸「断ち切られた鎖っていうのがいい。想いが断ち切られて片思いであることをビジュアルで表現するのに、あの鎖はいい手だと思ったんです」小夜子役・浅野真澄さんのコメント「きっと小夜子は、黒船さんがどんな人物でもいいんだと思います。ひよこが初めて見た動くものを親だと思ってしまうように、黒船さんというのは、初めて小夜子のことを親身になってくれた人なんじゃないかと」(ホルが黒船のことを「ひどい男」と言った時に、私が連想したのが『ルパン三世 カリオストロの城』に出てくる宮崎駿版のルパン三世でした。『カリオストロ』のルパンは、カリオストロ伯爵からクラリスを解放しますが、その過程でクラリスの心にその存在を深く刻ませるだけ刻ませておきながら、何もしないでクラリスの元から去って行くキザな「ひどい男」です。このルパンとクラリスの関係は、黒船と小夜子の関係と似ているのではないでしょうか。また、一昔前の自由人というイメージでも、黒船とルパンには共通点があるように思います*1

f:id:chapida:20190718194259p:plain 幻のエル:生命線を持たず、ボッカの心を惑わせようとする。榎戸「空間的に迷うことを迷宮とか迷路と呼んでますけど、心の迷いを形にしたのが迷宮とか迷路だと思うんですよ。だから迷宮を描くというのは、人の心の迷いとかを描くことだと思うんです。だから、主人公のボッカを迷わせるようなことが次々と投げかけられてくるんです。現実の迷宮も、そういうものだったみたいですよ。傷ついた時に旅行に行ったりするの、よくあるじゃないですか。あれも迷宮なんですよ。自分が悩んだりしている時に、答えを出すためには考えなきゃいけないですよね。だけど頭の中の迷宮は形がないから、イメージしにくいんですよ。それで、旅行に出かけて、その間に傷を治したりしながら、自分の家というゴールに帰ってくるという迷宮を、自分で設定してるんです。自分で作る迷宮ですね。あと同時に、迷宮は死のイメージでもあるんです。出かける前と出かけた後では、もう同じ人間ではないっていう。だから迷宮の物語に生贄の話が付きまとうのは、そういうことなのかなと思います」

第14話 出口という名の入り口

ケイ「僕も、宝物が捨てられるようになりたかったな」

 迷宮はホルの体内であり、彼に食われた子供は何度も反芻され、永遠に繰り返し死に続ける。大人になれなかったケイの悲劇を見せつけられたボッカだが、彼の心は揺るがなかった。榎戸「脚本書いてる時は意識してなかったんですけど、見直してみると、『銀河鉄道の夜』が入ってますね。牛の胃袋と迷宮を一つにしたのは、我ながら神が降りてきたと思いましたね(笑)」

f:id:chapida:20190718194811p:plain 謎の少年(エラン・ヴィタール):ボッカの深層心理から浮かび上がった幻影の少年。ボッカが戦いの勝機を思い付くきっかけとして登場する。榎戸「ただ者じゃないことが一目でわかっちゃうのはちょっと問題だったんだけど、どう見てもこれは謎の少年じゃなくて、謎そのものだよ(笑)」

f:id:chapida:20190718194858p:plain 榎戸「弓矢のキャッチボール(心の交流)は、どんな映画でも今まで誰もやったことないだろうと(笑)ボッカと黒船が落ち着いて話せるのが、この1回だけだろうとわかってたので、それゆえに、単に会話だけなくて印象的なコミュニケーション方法を思い付かなきゃと思ったんです。黒船はどっちがホルと戦うか、戦士としての主導権を争ってるんだけど、次第にボッカはどっちが小夜子の男だよって恋愛の要素が混じっていく。だけど本人は気付いてないんです」

ホル「この広大な世界が、私一人のために作られたのかと思うと、吐き気がする」

 神話では、ミノス王は王妃の息子であるミノタウロスを殺すことができず、二度と出ることが叶わぬ広大な迷宮を築き、ミノタウロスを幽閉する。

ホル「あのボッカってやつは、昔のお前とそっくりだな」

 榎戸「迷宮に入る前小夜子が、"あなたは黒船さんとは全然違う"と言ったことに対する対比ですね。若いボッカと小夜子には、ボッカと黒船さんは全然違う者に見えてるんだけど、大人から見たら、すごくよく似たタイプに見えてるという。それはつまり、小夜子がいずれボッカのことを好きになるという暗示でもあるんです」

糸玉:第1話のホルの台詞「お前の糸を断ち切ってやる」とも繋がる言葉である。榎戸「ミノタウロスの神話というのは、退治する以前に迷宮の中で迷っちゃって、モンスターそのものよりも迷宮の方が怖いっていう話なんですよ。最後テセウスという英雄がミノタウロスを退治しに迷宮の中に入っていくんですけど、その時に恋人のアリアドネが糸玉をくれるんです。糸を辿っていけば、退治した後、迷わずに帰って来られるという話で、それをボッカと小夜子の関係でどう使うかなっていうところで、鎖がちょうどいいんじゃないかと。その神話というのは要するに、退治するのが目的じゃなくて、帰って来るべき会いたい人が外にいれば、結局出て来れるっていう意味なんじゃないかと思ったんですよね。迷宮から出るためには、糸玉が必要なんだけど、糸玉が何かといえば、目的なんですよ。目的を持ってる人は、迷宮から出られるっていうことですね。出たいと思わない人は、出られないってことです。強く帰りたいと思った時が、もう出口なんですよ」

ホル「迷宮の外にあるものそれは、本物の迷宮だ」

 出口とは入口に過ぎないということ。第1話でもホルは「ここは全て迷宮なのさ」と断言していた。こう現実を捉えてしまえば、「閉じ込められている」などナンセンスな思い込みに過ぎないのだろう。榎戸「この一言が言いたかった。例えば遊園地の迷宮というのは、迷宮要素を特化しているだけであって、本当は現実も迷宮なんですよっていうことです」

f:id:chapida:20190718195438p:plain 現実と非現実の境界が水面であり、ボッカは小夜子を掴み現実へと抜け出る。一方、ジャガーの太陽号は黒船の後を追うように沈んでいく。黒船は迷宮の中で戦士としての生き様を貫く。(批評家の更科修一郎さんは黒船について、迷宮で堂々巡りの戦いを繰り返しているだけで、それ以外のことには関心を持たない"余裕のない大人"であり、「永遠に子供のロマンを抱き続ける大人の象徴」だと述べている)榎戸「ボッカは黒船の生き方を踏襲しつつも、やはり違うんです。ラブコメ的な快楽世界に浸っている(エルとの学園生活)のと、それを"そんなものは幻想の世界だっ!"と完全に否定して、"もっと理想(忘却の旋律)を追い求めていくのが男の生き方だっ!"と言ってしまうこと(黒船の生き方)は、一見反対のことを言っているようだけど、実は変わらない。というのは、同じレベルで楽なんですよね。頭を使わないという意味においては。黒船が青春を過ごした時代には、黒船の方法論で良かったと思うんですよ。ただ、おそらく今の時代というのは、ボッカにとっては最も面倒くさい存在である小夜子(生身の女の子)との関係を、面倒くさがらずに、いかにして丹念に描いていくかということでしか、結局モンスターと戦えないんじゃないのかなと思ったんです」

笛吹き:リコーダーを吹く少年を模したモンスター。ボッカが暮らしていた街を支配している。元ネタはギリシャ神話に登場する、神や人間に恐怖を与えるいたずら好きの牧畜の神・パン。
青銅の巨人:天空を貫くほどに巨大なモンスター。元ネタは、ギリシャ神話に登場するクレタ島の番人・タロス。榎戸「モンスター・ユニオンをなるべくインチキ臭く見せるためにも、モンスターは由緒正しい方がリアリティがある。手垢の付いたギリシャ神話のモンスターとかを引用すれば、逆にそれが作品のカラーにならない。そこがいいなと思ったんです」

FLCL Blu-ray BOX  ミノス王の宮廷 (現代教養文庫―ギリシャ神話アドベンチャーゲーム)  読みはじめたらとまらないダンテ『神曲』 (青春文庫)

*1:第1話の時点で、小夜子も黒船のことを「ひどい奴なの」と言っている。